少し上向くEnoのメモ

えのころ草をはじめ、気分が上向く物のカケラ集めのブログです。

吉野弘さん作、「虹の足」。今わかる良さ。中学教科書にあった名作。

「虹の足」に本当は包まれているかもしれない。「おーい 君の家が虹の中にあるぞォ」。

「虹の足」という詩。中学の教科書で習うけれど、大人になって感覚的にどんどん心に沁みてきます。

辿り着けない、自分では見えない幸せを「虹の足」にたとえている名作です。

でも、私が歳負うごとに感じている、この詩の質感のようなものは、もう少し違って。。

消える、ということなんです。

自分では気づかないけれど、「虹の足」は確かにあって、実はその幸せに包まれていたりする。

でも気づいた時にはもう消えてしまっている。。。

気づかないけれど存在する幸せ、という風に読めば明るいけれど、

やがて消えてしまう幸せ、でもあるからこその虹だと思うと。。。

中学生あたりで、家族の温かさから、飛び出したいぐらいの勢いがある時に、実は「虹の足」の下にいるからこそ、教科書に載っていたのかも。

下に、吉野弘さん作、「虹の足」を紹介します。

虹の足
吉野 弘
雨があがって
雲間から
乾麺みたいに真直な
陽射しがたくさん地上に刺さり
行手に榛名山が見えたころ
山路を登るバスの中で見たのだ、虹の足を。
眼下に広がる田圃の上に
虹がそっと足を下ろしたのを!
野面にすらりと足を置いて
虹のアーチが軽やかに
すっくと空に立ったのを!
その虹の足の底に
小さな村といくつかの家が
すっぽり抱かれて染められていたのだ。
それなのに
家から飛び出して足にさわろうとする人影は見えない。
――おーい、君の家が虹の中にあるぞォ
乗客たちは頬を火照らせ
野面に立った虹の足に見とれた。
多分、あれはバスの中の僕らには見えて
村の人々には見えないのだ。
そんなこともあるだろう。
他人には見えて
自分には見えない幸福の中で
格別驚きもせず
幸福に生きていることが――。

 

今週のお題「名作」。1年前にも書いた事があるこの詩を取りあげてみました。